江戸しぐさは学びから
江戸時代の町方の学校と言えば寺子屋ですが、
寺子屋には一般の寺子屋と江戸寺子屋の2種類がありました。
一般の寺子屋は、私たちもよく知っているタイプ。
読み書きそろばんを中心に教えるところです。
江戸寺子屋は、商家の親たちがお金を出し合って師匠を共同で雇い、
どんな身分の子弟でも入れるものです。
自分たちの子供のための寺子屋なのですが、学びたい子は誰でもおいで、という
江戸商人の懐の深さを感じられるオープンなものでした。
その信条は、
「将来性のある者には、その者の長所を生かし、出来損ないのは、その短所を矯正し、海の者とも山の者とも分からない人間からは、その者の良い芽を引き出してやるべし」 出展:『「江戸しぐさ」完全理解』 越川禮子 林田明大
というものでした。
今の学校に聞かせたい言葉です。
出来損ないも見捨てない。
誰にでもよいところはある。
教育とはこうあって欲しいです。
そして、師匠は子どもたちに、
「寺子屋で、人と人との良い付き合いができる人間になるように勉強して下さい。人の心がわかる商人を目指してください。」
と話すそうです。
今なら、「がっつり稼ぐ商人になってください。」とでもいいそうですが、
「人の心がわかる商人」を目指す。
稼ぐことは、ニの次なんですね。
当然、人の心がわかる良い商人になれば、自然と稼げることでしょう。
今の時代だと、「稼ぐためには、人の心を理解すること。」と、稼ぐためのノウハウとして教えるのでしょうけど、
江戸では、人の心を分かること自体を目標に、子供たちは勉強しました。
結果は同じでも、優先順位が違います。
寺子屋での勉強は、見る・聞く・話す、そして、考えることに力を入れていました。
人間教育を一番に考え、9割が行(おこない)、1割が書物などの知識からの学び。
習字をするのにも、生活に密着した言葉を選んで、文字を書きながら、生活について学びます。
また、6歳までに古典に親しみ、9歳までにはボキャブラリーを増やすため、
大人の言葉でどんどん話しかけたそうです。
これは、言葉づかいを学ぶため。
言葉遣いといっても、単に丁寧に話すということではなく、
「おはようございます」+「今日はよいおてんきですね」というように、
世辞(お世辞とは違います)が言えるようにトレーニングするのです。
また、そのためにブレーンストーミングやロールプレイングなどが行われていたそうです。
200年も前の、ちょんまげの時代に、今でいう小学生たちがですよ。
ずいぶん進んでいたのですね。
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